【在留資格】についてのわかりやすい【まとめ】
更新日時:2020年6月26日
行政書士 佐久間毅
はじめに
在留資格について理解したいのですが、在留資格はビザとは違うのですよね?
うん。在留資格と査証(ビザ)は、日常用語としては混同して用いられるけれど、法的にはまったく別ものだよ。
ビザは日本へ入国することについての在外公館の推薦状だから、日本に到着した時点で無意味なものになるんですよね?
そうそう。だから外国人が日本の空港や海港に到着して入国が許可されると、何回も使えるマルチのビザでない限り、ビザには「CANCELED(無効)」というスタンプが押されて使えなくなるよ。
無効とされた査証の代わりに空港や海港でもらえるのが、日本の滞在資格である「在留資格」というわけですね?
入国するために必要なのが査証(ビザ)で、入国した後に必要になるのが在留資格と理解すればいいよ!
【解説】
婚約者や配偶者などの外国人の方が日本に入国して滞在するためには、米軍関係者などごく一部の例外を除いて、必ず在留資格という資格を取得して保有することが必要です。
日本に合法的に滞在されている外国人は、旅行者であれ、出張の方であれ、日本人の配偶者であれ、永住者であれ、必ず何かの在留資格をもっています。
以下では、東京の日本ビザの専門家、アルファサポート行政書士事務所が、「在留資格」についてわかりやすく解説します!
在留資格とは?
在留資格とは、外国人が日本に合法的に滞在するために必要な資格のことです。
現在は27種類の在留資格が「出入国管理および難民認定法」(略して入管法と呼ばれます)という法律で規定されています。
在留資格は、その資格の種類ごとに日本で行うことができる活動が定められています。
例えば、雇用されている料理人が在留資格「技能」を取得した場合には、日本では料理人としての仕事のみをすることができ、会社の経営者としての活動や翻訳家としての活動を日本国内ですることが原則としてできません。
なぜなら、会社の経営者としての活動をするためには在留資格「経営管理」、翻訳家として活動するためには在留資格「技術・人文知識・国際業務」という別のカテゴリーの在留資格が必要だからです。
同時に2つの在留資格をもつことはできず、必ずどれか1つを選択しなければならないので、外国人の方にとってはかなり不便を強いられる場面もあります。
現在保有している在留資格が認めている活動に加えて、他の在留資格が認めている活動をあわせて行いたい場合の解決策のひとつとして、資格外活動許可があります。入国管理局に資格外活動許可申請をして許可されると、保有している在留資格では本来することができない活動をすることができるようになります。
長期にわたる日本滞在をご希望の場合は、在留資格「永住者」を取得することが最終的なゴールとなりますが、在留資格「経営管理」や在留資格「高度専門職」の人に認められることが在留資格「永住者」の方には認められないことがある(外国人家政婦の招へい)など、どの在留資格を選択するのかということについて高度な判断が必要な場合もあります。
在留資格は在留期限とセットで与えられます。在留期限とは、在留資格の有効期限のことで、どれだけの期間、日本に滞在できるかを表しています。そして在留資格ごとに許可されうる在留期限が異なります。
在留資格「日本人の配偶者等」の場合は、5年、3年、1年、6か月です。この中のいずれかから決定されます。同じ在留資格をもっている人でも、どれだけ長く日本に滞在してよいかという期間は、人それぞれに異なるのです。
この在留期限が過ぎても日本に滞在することをオーバーステイと言います。
1日でも超過するとオーバーステイとなり当然ペナルティが設けられていますので、在留期限内に更新の手続きをするか、在留期限内に出国するなどしなければなりません。
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在留資格を最終的に許可・不許可にする権限は「入国審査官」にある
入管法には次の規定があります。
入管法第9条第1項
入国審査官は、審査の結果、外国人が第七条第一項に規定する上陸のための条件に適合していると認定したときは、当該外国人の旅券に上陸許可の証印をしなければならない。
入管法第9条第3項
第一項の証印をする場合には、入国審査官は、当該外国人の在留資格及び在留期間を決定し、旅券にその旨を明示しなければならない。
つまり、外国人の方に最終的にどの在留資格とどれだけの在留期限が認められるかは、実際に空港や海港に到着してみないと分からないということです。
ただし、通常は、後に詳しくご説明する「在留資格認定証明書」を提示することにより自らの在留資格適合性を立証できるので、空港や海港で在留資格が認められないということはめったにありません。
在留資格「日本人の配偶者等」の関連してそれがあるとするならば、在留資格認定証明書が交付された時点では結婚していたが、その後に離婚して、外国人が日本の空港に到着した時点ではすでに日本人の配偶者ではなくなっていた場合など限られたケースに限られます。
従って、まずは在留資格認定証明書の取得に全力をあげることとなります。
中長期の在留資格を証明してくれる「在留カード」
日本に合法的に滞在している外国人の方は、必ず何がしかの在留資格を持っていますが、自分が在留資格をもっているということを証明する手段として「在留カード」が交付されます。
在留カードはむかし存在していた「外国人登録証」に近いものですが、かつての「外国人登録証」は不法滞在の外国人にも交付されてしまうという制度的な欠陥を抱えていたため、2012年に大きな制度改正がなされて現在に至っています。
この在留カードは、成田空港、羽田空港、中部国際空港など大きな空港に到着された外国人には、空港で発行されます(その後、市区町村役場で住民登録が必要です)。
在留カードには、①氏名、②生年月日、③性別、④国籍、⑤住居地、⑥在留資格、⑦在留期限などが記載されていて、これを見せれば自分の在留資格を他人に証明することができます。
ちょうど自動車を運転する資格を証明する「運転免許証」のようなものとイメージしていただけると良いです。
在留カードはすべての外国人に対して発行されるわけではありません。
日本に滞在する外国人には、2・3日の日本滞在ですむ出張者や旅行者などが大勢含まれますので、これらの方にすべて在留カードを発行するのは効率的ではありません。
在留カードは3か月を超える在留期限を認められた中長期滞在者のみに交付されます。3か月以下の在留期限を認められた外国人に在留カードが交付されることはありません。
短期の在留資格を証明してくれるのは「パスポート」の証印
婚約者の方が貴方の友人・知人として日本を訪問したり、貴方の配偶者のご親族が日本を短期で訪問したりする場合には、在留資格「短期滞在」が認められます。
在留資格「短期滞在」の最長期間は90日ですので、短期滞在者の外国人に在留カードが交付されることはありません。
この場合は入国の際に空港で入国審査官がパスポートに貼付する証印に、在留資格と在留期限が記載されますので、これで自らの在留資格を証明することとなります。
在留資格と査証の違い
査証とは、外務省の機関である在外公館が、当該外国人が日本に入国するについて事前に審査して発給する推薦状のようなものです。査証免除国の外国人でない限り、この査証のない方が日本の空港に到着しても入国することができません。
つまり、原則として事前に査証の発給を受けることは、日本の入国につていての必要条件です。
一方、査証があるからといって必ず日本に入国できるというわけではありません。最終的に入国の許否を決定するのは、空港の入国審査官であるからです。
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29種類の在留資格
2020年6月現在、日本の在留資格は29種類に分かれています。1号、2号といったものを別の在留資格であるとして数えるともっと多くなります。
大別すると、①身分系の在留資格、②就労系の在留資格、③その他の在留資格に分かれます。
29種類の在留資格一覧(法務省作成)
(出典)出入国在留管理庁ホームページ
上手く当てはまるものがない場合には・・・
〇〇の理由で日本に入国して滞在したいけれども、ぴったり該当する在留資格が存在しない、ということは良くあります。
何しろ在留資格は27種類しかありません。外国人の方のあらゆるニーズに27種類の在留資格で対応できるかというとそうではなく、在留資格と在留資格のはざまに落ち込んでしまったかのようなケースもあります。
ぴったりあてはまる在留資格が見つからない場合には、なんとか認めてくれそうな近い在留資格で申請をするか、諦めるほかありません。
上手く当てはまる場合は、立証を念入りに!
例えば、日本人とご結婚をされた外国人が申請をされる場合には在留資格「日本人の配偶者等」というぴったりの在留資格が設けられていますから、これを申請することとなります。
でもこの在留資格が許可されるためには法律上結婚をしているだけではダメで、そのほかにも多くの条件を満たさなければなりません。そしてこれらの条件を満たしていることを立証する責任は申請者側にありますので、丁寧にそれを立証する姿勢が求められます。
在留資格の種類は増えている!
2017年9月には介護福祉士の資格を有する外国人のために在留資格「介護」が創設されましたが、2019年4月からは、14の業界の人手不足解消のため、在留資格「特定技能」が新たに加わる予定です。賛否両論あるものの、少子高齢化が進む日本では、徐々に外国人に対して門戸を広げつつあります。
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短期の在留資格の取得方法
査証免除国であるか否かが最初の判断のステップ
査証とは在外公館が発給する日本入国のための推薦状であるおことは先にご紹介しましたが、この査証は、一定の国の国籍の方が日本に短期滞在(90日まで)をする場合には取得が免除されます。つまり在外公館で発給する査証を受けなくても、有効な旅券を有していれば入国できる可能性があります。
査証が免除される国と地域は、現在は67あります。かなり多くの国の国民が、短期滞在であれば査証なしで入国できます。
ただし、査証免除で入国した結果取得する在留資格は「短期滞在」なので、この在留資格で認められる活動が何であるかをきちんと把握しなければなりません。
入管法の別表では次のように定められています。
在留資格「短期滞在」で行うことができる活動
本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動
在留資格「短期滞在」の保有者が報酬を受ける活動をすることはできませんので、そのような活動をする場合には、たとえ90日以内の滞在でも別途査証を取得しなければなりません。
査証が必要な国のご出身の場合
短期の査証を申請する場合は、短期商用等、観光、親族知人訪問のいずれかのカテゴリーを選択してそれぞれの申請に必要な書類を準備し、直接、在外公館又は代理申請機関に申請をします。
ただし招へい人となる日本人側で準備する書面もありますので、外国人のみで準備を完成することができるわけではありません。むしろ招へい理由書など日本側で作成する書面が許否に大きな影響を与えます。
・婚約者を日本に呼ぶ・・・婚約者はまだ親族ではありませんので知人訪問または観光で来日します。
・配偶者の親族を日本に呼ぶ・・・この場合は親族訪問になります。この場合の親族とは、血族・姻族3親等内の方を指します。
申請のフロー ※一部の国の国籍の方はこれとは違うフローになります
STEP1
日本国内の招へい人が、①招へい理由書、②滞在予定表、③身元保証書その他の必要書類を用意する
※ビザ専門の行政書士がお手伝いをすることも可能です。
外国人が①旅券、②査証申請書、③写真その他の必要書類を用意する。
※国によってこのほかにIDカードの提示を求められたりします。
STEP2
日本国内の招へい人が外国人にSTEP1で準備した書類を送付する
STEP3
外国人が居住地の最寄りの日本大使館や総領事館等で申請をする
※その国に日本の在外公館が複数ある場合にはどこに申請をしても良いのではなく、居住地を管轄する
在外公館へ申請します。
STEP4
日本大使館・総領事館にて審査
※慎重審査にまわると面接を受けたり、追加資料の提出が求めらる場合があります。
STEP5
審査終了後、旅券を取りに行きます。
STEP6
査証が発給された場合は、査証の有効期限が3か月であることに注意してください
長期の在留資格の取得方法(例:在留資格「日本人の配偶者等」)
ご結婚されたお相手が日本にいるか海外にいるかによって申請の方法は異なります。
しかしいずれにせよ、入国管理局に申請をすることとなります。
お相手が海外にいるなら「在留資格認定証明書交付申請」
STEP1 必要書類をそろえて入国管理局に在留資格認定証明書交付申請をします。
※ビザ専門の行政書士がお手伝いすることも可能です。
STEP2 在留資格認定証明書が交付されたら、海外のお相手に送付します
STEP3 お相手は日本大使館・領事館へ査証の申請をします。
STEP4 査証の貼付された旅券と在留資格認定証明書をもって日本にやってきます
STEP5 羽田空港・成田空港など大きな空港に到着し、入国が許可された場合には、空港で在留カードを受け取ります
STEP6 空港で受領した在留カードには住居が未記載のため、居住する市区町村役場で住民登録をし、在留カードの裏面に住所を記載してもらいます。
※自分で記載するのではありません。
※住民登録が完了すると、日本人と同じように住民票を取得できます。
お相手が日本にいるなら「在留資格変更許可申請」
STEP1 必要書類をそろえて入国管理局に在留資格変更許可申請をします。
※ビザ専門の行政書士がお手伝いすることも可能です。
※短期滞在からの変更は「やむを得ない特別の事情」がない場合は入管法の明文で認められていません。
STEP2 入国管理局から通知が来ます。
STEP3 入国管理局に、旅券など指示された書類をもって受領に行きます。
STEP4 許可された場合は、入国管理局で新しい在留カードをもらえます。
在留資格の取消し
在留資格の取消とは、いったん日本国から与えられた在留資格が、何らかの事情が生じたことを理由として国家により消滅させられることを言います。
例えば日本の「永住者」というと今後ずっと日本に住み続けることを保証された人のように思いがちですが、永住者も在留資格「永住者」という在留資格の保持者ですので、下記①③に該当すれば在留資格を取り消され、場合によっては退去強制となります。
取り消される場合は、大別して3つのケースに分けられます。
ケース① そもそも在留資格を与えたこと自体が間違いだったケース(偽りその他不正の手段によって在留資格を取得した場合など)
ケース② 在留資格を与えたことは正しかったが、その後、在留資格を維持していることが適当でなくなったケース(学校に入学したので留学ビザをもらったが、その後中退した、結婚して配偶者ビザをもらったが、その後離婚・死別した、就職して就労ビザをもらったがその後、退職し無職となった等)
ケース③ 適切に住所地を届け出ていないケース(引っ越しをしたのに新しい住所を届け出ないなど)
悪質なケースの場合は在留資格が取り消されるのと同時に退去強制となりますが、その他の場合は、出国のための準備期間が与えられ、その期間内に自主的に出国することとなります。
■この記事を書いた人
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。執筆サイト:配偶者ビザほか多数。